立教大学ボランティアセンター20周年 生き続けるスピリット
立教大学
2024/02/05
トピックス
OVERVIEW
2003年に設立した立教大学ボランティアセンターは、今年で20周年を迎えました。センターの設立以前から、立教大学にはボランティア活動の歴史と伝統があります。キリスト教に基づく奉仕の精神を具現化するものとして行われてきた活動の数々。学生は、他者との関わりや社会課題への取り組みを通して、共生社会の担い手として成長していきます。設立以前から息づく立教のボランティア活動についてご紹介します。
人との関わりから得られる成長。立教にしか成し得ないボランティアの形を
立教学院副院長
チャプレン
中川 英樹 NAKAGAWA Hideki
「道を伝えて己を伝えず」という言葉で語られる創立者ウィリアムズ主教の生き方は、「仕えられるためにではなく仕えるために」生きるキリスト者の模範として、立教大学のボランティア精神の原点を示しています。また、本学のボランティア活動を語る上で欠かせない存在が、1926年に本学教授に着任したポール?ラッシュ博士です。ボランティアセンター長を務める中川英樹チャプレンは次のように話します。
「博士は青年たちが担っていく、この先の社会を展望しつつ『日本聖徒アンデレ同胞会(BSA)』という組織を発足させ、山梨県の清里高原の開拓を通し青年たちの人間形成に尽力しました。フィールドに出向き、他者と奉仕活動を行う中で得られる出会いや気付きが成長の力になると考えたのだと思います」
- (左)創立者チャニング?ムーア?ウィリアムズ主教(1829~1910)
1874年、聖書と英学を教える私塾を築地で始め、キリスト教に基づく人間教育に努めた。間もなく立教学校と称する。
- (右)ポール?ラッシュ博士(1897~1979)
1926年、立教大学の教授に着任。地域、教会、病院などへの奉仕活動を生涯にわたって実践。アメリカンフットボールの普及に努めたことでも知られる。
このような背景を持つ本学のボランティア活動は、「ボランティア」という言葉が社会に定着する以前から、チャペル団体やサークル、大学内の部署などで幅広く展開されてきました。1989年から始まった「環境と生命」というセミナーは、山形県東置賜郡高畠町に学生たちが出向き、有機農業のボランティアを通して、便利な社会と環境問題、人間への影響などについて考える機会となりました。この取り組みは、「農業体験in山形県高畠町」として今もなお続いています。
清里環境ボランティアキャンプ
農業体験in山形県高畠町
2016年からスタートした、社会の現場での活動と学問的な教育の結合を目指す「立教サービスラーニング(RSL)」は、本学のボランティア活動と密接に関わるものです。RSLの実践系科目では学生がさまざまな実習先で体験的に学びますが、もともとボランティアセンターと関わりがあった地域や団体が複数存在します。RSLを履修した後も、その地でボランティアとして自主的に活動する学生の姿も見られます。
立教大学におけるボランティア活動の意義について、中川チャプレンはこのように語ります。
「本学では、正課教育と正課外教育の“往還”による人間教育を大切にしており、座学で学んだことを自らがフィールドに身体を置くことによって、理解を深めるという
- 東日本大震災への取り組み
東日本大震災発生を受け、2011年4月に復興支援本部を立ち上げ、全学的な復興支援に取り組む。2012年、岩手県陸前高田市と包括連携協定を締結。2017年には岩手大学と協働で交流活動拠点「陸前高田グローバルキャンパス」を開設。現在も同市をフィールドとした多様な正課?正課外教育プログラムを実施している。
ボランティアセンター 20年の歩み
立教大学ボランティアセンター
MISSION
このミッションの下、さまざまな支援や活動に取り組んでいます。
- 学生個々の支援(相談業務、ボランティア?カフェの開催、個の支援)
一人一人の学生に寄り添い、ボランティア活動の理解を促進します。社会のニーズと学生のニーズをきめ細かくコーディネートし、多種多様な情報の中から適切な情報提供とアドバイスを行います。
- 多様なニーズに対応した体験機会の提供(1dayボランティア)
急変する社会のニーズやグローバル化する世の中の動きに素早くかつ柔軟に対応し、さまざまな体験の機会を提供します。
- 学生ボランティアサークルの支援(ボランティアオリエンテーション、登録団体制度)
立教大学でボランティア活動を行う学生サークルをつなげ、それぞれの特徴?伝統を生かしながら発展していけるよう支援します。
- 独自のプログラムや学びの場の提供(キャンプ?授業)
学生が現場に足を運び、自分の目で確かめ、行動?実践しながら学んでいく、主体的な学びができるボランティアセンター独自のプログラムを実施します。また授業の実施などを通じて、社会の現場を知る機会を提供します。
- 立教大学他部局との協働(学内の協力連携)
学内のさまざまな学生支援部局や立教サービスラーニング(RSL)センターとの協働?連携を推進し、多角的に学生をサポートします。
- 地域連携
立教大学周辺の地域(池袋?新座)の課題に向き合い、共に連携します。
記念シンポジウム
「Fukushimaは世界でどのように報道されているか」(2023年5月31日)
3?11後の福島県の実情について取材を続けている、本学海外
「失敗する力~私たちにはどのような失敗が必要なのか~」(2023年6月9日)
行動することをためらって動けなくなっている若い世代の背中をそっと後押しするようなシンポジウムを開催。基調講演として、本学客員教授でジャーナリストの池上彰氏が登壇。同氏のさまざまな失敗談や、失敗を成功に結び付ける心の持ち方、思考の転換などについてお話しいただきました。また、学生とボランティアコーディネーターを交えたトークセッションを通して、これからの社会での生き方やボランティア活動が持つ可能性?価値について共有する機会となりました。
学生コーディネーターの声
応募した理由?きっかけ
(左)現代心理学部2年次 松戸 徳寿さん、(右)経済学部4年次 児島 渚佐さん
児島 大学入学時からコロナ禍で課外活動に取り組むのが難しい状況でした。2022年度になって活動しやすい環境になったので、何か有意義な経験がしたいと思い応募しました。
学生コーディネーターの指針?活動内容
ボランティアを知るきっかけの場として学生コーディネーターが企画した「ボラカフェ」
松戸 独自の企画の一つとして、2022年度の冬には「ボラカフェ」というイベントを開催しました。ボランティアに興味のある人に立ち寄ってもらい、ゲストとして招いたNPO法人の方にボランティアの魅力などを語っていただきました。
活動の中で成長したこと
松戸 新しい企画を考え、実現する力が身に付いたと思います。また、ボランティアとしてサポートされる側とコーディネーターとしてサポートする側の両方を経験して身に付いた「異なる視点で考える力」を、今後に生かしていきたいです。
※校友会報「セントポール」463号の特集を再編集しています。
立教ボランティアセンターが関わる授業?主催講座
ボランティア論~転換期を迎えた社会で求められること~
(全学共通科目コラボレーション科目)
多様な分野で活躍する講師から、ボランティアの最前線の話を聞くことができる授業。社会問題を考え、自分と社会との接点を意識する機会となります。毎年、この授業をきっかけにボランティア活動を始める学生も多数。
立教生ウクライナ支援ボランティア参加報告会
戦火のウクライナで避難民支援のためのプログラム「The Volunteer Program for Ukraine」(日本財団ボランティアセンター主催)に参加した立教生2人が、現地の様子や活動を通して感じたことなどを報告しました。
災害救援ボランティア講座
防災?減災や災害対策の普及?啓発を行っている「災害救援ボランティア推進委員会」と共同で開催する講座。災害救援ボランティアの基礎的な知識とスキルを習得します。2003年のボランティアセンター設立時から続く取り組みです。
立教ボランティアセンター独自プログラム(一部)
農業体験in山形県高畠町
有機農業の里として知られる上和田有機米生産組合との交流を図りながら、農?食?環境を考える5日間のプログラム。高畠の豊かな自然や、人としての本質的な生き方を実践する人々との出会いは、既存の価値観を見つめ直すきっかけに。
清里環境ボランティアキャンプ
緑豊かな八ヶ岳山麓の清里高原を拠点に、立教学院(小?中?高?大)の児童?生徒?学生が共に取り組む自然保護活動。一貫連携教育の中で各学校の構成員が集まる唯一のプログラムとして2004年から歴史を刻んでいます。
1dayボランティア
「ボランティアに関心はあるけど、一人で始めるのは不安」といった学生に、1日から参加できるボランティア活動の機会を提供するプログラム。2022年度は「東京都障害者スポーツ大会」の運営をサポートする活動を行いました。
INFORMATION
- ボランティアセンター
ボランティアセンターの概要やイベント?プログラム予定等を幅広く紹介しています。
※本記事は季刊「立教」266号(2023年11月発行)をもとに再構成したものです。バックナンバーの購入や定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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